忘れる! 技術
意識的に忘れると得をする
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世の中に記憶術の本は沢山ありますが、何かを忘れる技術について書いた本は多くありません。人間は放っておいても何でも忘れてしまうので、そんな技術は必要が無いのかもしれませんが、嫌なことを思い出してクヨクヨすることをなくすためには、積極的に何かを忘れるための技術が必要です。 何かを忘れた方が都合が良い場合、その記憶が長期記憶化しないようにすることが効果的です。電話番号や数式のように、学習によって収得する意味記憶は忘れてしまう可能性が高いものですが、昔の友達との経験や、どこかに旅行に行った思い出のようなエピソード記憶は時間がたっても忘れることがありません。 一度だけ聞いた電話番号を忘れるのは簡単ですし、意味記憶の場合は放っておけば長期記憶化することはありませんから忘れる技術は必要ないでしょうが、エピソード記憶の場合は記憶が体に染み付いており、忘れることが難しいことが多いようです。しかし、いわゆる記憶喪失はエピソード記憶に対してのみ起こると言われていますし、エピソード記憶だからといって絶対に消せないというわけではありません。努力によって記憶を消すことは不可能ではないと思われます。 何かを長期記憶として定着させるためには定期的に復習することが効果的ですが、逆に、記憶の復習を徹底的に排除するようにすれば長期記憶化を避けることができるかもしれません。私が実践しているのは忘れたいことを思い出しそうになったときは瞬時に違うことを考えるという方法です。嫌なことを思い出しそうになったとき、その事についてつい思い出して反省したりしがちですが、そういうことをすると長期記憶化が促進されてしまいます。たとえ反省材料になる可能性があったとしても、嫌なことのために気分が鬱になったりすることに比べれば何も思い出さない方がマシでしょう。
もうひとつ有効なのは嫌な記憶を別の楽しい記憶で上書きするという方法です。私が昔とある学会に投稿した論文がリジェクト(採録拒否)された後、同じ論文を別の学会に投稿したらアクセプト(採録)されたことがあります。私にとって後者は喜ばしい体験だったので前者の体験が完全に消去されてしまい、他人に指摘されてはじめて前者の学会に投稿したことを思い出したことがありました。私は忘れるのは得意な方なのですが、ここまで完璧に忘れることが可能なのだと自分に感心したものです。記憶の上書きは必ずしも可能ではありませんが、長期記憶化しないように注意することは難しくありません。心の平和を求めるには、忘れる技術を最大限に発揮するのが賢いといえそうです。